稲荷前にある狐の地蔵は何を意味するのか?

雨降りバス停で、父親の帰りを待つサツキとメイ。
このときに、メイは疲れて眠ってしまい、その間にサツキがトトロと初遭遇しますが、その前のシーンで、メイがウロチョロして狐の地蔵を見つけ、怖がるシーンがあります。
このシーンは、明らかに意図的に入れています。(メイが怖がる描写は意味なく入れる必要性がないため)
実際は、数秒のカットなので見落としてしまう人も多いと思いますが、トトロの世界観を語る上では非常に重要なシーンです。
ということで、この狐の地蔵でメイが怖がるシーンは、一体何だったのか、考えてみました。
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「異界への入り口」を示す境界線(結界)の役割

あのバス停の名前は「稲荷前」です。つまり、二人は神社の目の前に立っています。
日本の古来の信仰において、神社や鳥居、そしてお稲荷さんは「人間の暮らす現実世界」と「神様や精霊が住む異界」の境界線(結界)としての役割を持っています。
メイが狐の像を見つけたあの瞬間、二人が現実とファンタジーの境界線上に立っていることが視覚的に示唆されています。
だからこそ、その直後に異界の住人であるトトロやネコバスが違和感なく現実のバス停に現れることができるのです。
あの狐は、ここから先は不思議な世界ですよという視聴者へのサインとして機能しています。
トトロの安心感を際立たせるための緊張の緩和

演出面で非常に効果的なのが、メイの恐怖心のコントロールです。
暗い雨の夜、なかなか帰ってこないお父さんを待つ心細さの中で、無機質で少し不気味な狐の石像がスッと現れます。
ここでメイ(と視聴者)は一度、夜の暗闇=怖いものという緊張感を感じます。
その直後に、得体の知れない巨大な生き物(トトロ)が隣に立ちます。
普通ならパニックになるはずですが、直前に底知れない暗闇や不気味な石像という本能的な怖さを味わっているため、横に並んだトトロのずんぐりとしたフォルムや、雨粒に喜ぶ無邪気な姿が、かえって得体の知れないものだけど、怖くない、むしろ安心できる存在して際立つよう計算されています。
日本の原風景と見守る存在

ジブリ作品、特に宮崎駿監督の作品には、お地蔵様や小さな祠(ほこら)が日常の風景として頻繁に登場します。
サツキとメイが雨宿りをしたのもお地蔵様の小屋ですし、メイが迷子になって座り込んでいたのも六地蔵の前です。
これらは、自然の中には常に人間ならざるもの(神や精霊)がいて、人間の暮らしのすぐそばに存在しているというアニミズムの世界観を表しています。
雨の暗闇の中で静かに佇む狐の像は、人間界に迷い出たトトロやネコバスの気配を、静かに見守っているようにも見えますね。
まとめ
バス停の名前「稲荷前」が示す通り、狐はお稲荷さんの神使であり、そこが神様や精霊の住む異界への入り口(結界)であることを暗示しています。
また、暗闇に浮かぶ不気味な石像で一度恐怖心を煽ることで、直後に現れる巨大なトトロの安心感をより際立たせる見事な対比の演出です。
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