
映画『千と千尋の神隠し』で、主人公の千尋が働くことになる豪奢で不思議な湯屋「油屋(あぶらや)」
八百万の神々が日々の疲れを癒しに訪れるこの壮大な建物は、物語の中心となる重要な舞台です。
異世界に迷い込んだ千尋は、魔女の湯婆婆と契約を交わし、ここで働きながら元の世界へ戻る方法を探ることになります。


千と千尋の神隠しの油屋のモデルは?
結論から言うと、油屋には完全なモデルの建造物は存在しません。
しかし、スタジオジブリ公式やスタッフが参考にしインスピレーションを受けたと明言している場所はいくつか存在します。
もっとも有名なのが、愛媛県松山市にある道後温泉本館です。
宮崎駿監督自身が入っていると言及しており、複雑に増改築を繰り返した木造建築の重厚な佇まいや、夜になると明かりが灯るノスタルジックな外観は、まさに油屋そのものです。

公式も認める油屋のモデル・道後温泉本館の様子 画像引用元: Aflo.com
また、油屋の絢爛豪華な内部のモデルとして挙げられるのが、東京都の目黒雅叙園です。
和洋折衷の極彩色豊かな装飾は、神々が宴会を楽しむ煌びやかな空間に影響を与えています。

(現・ホテル雅叙園東京)
さらに、東京都小金井市の江戸東京たてもの園にある銭湯・子宝湯のエキゾチックな唐破風屋根や、文具店・武居三省堂の壁一面の引き出し(釜爺のボイラー室のモデル)も、油屋を構成する重要なピースとして公認されています。
聖地はある?
公式のモデル地以外にも、ファンの間で油屋の世界観を体感できる聖地として愛されている場所が国内外に存在します。
群馬県の四万温泉にある積善館は、赤い橋が架かる歴史ある温泉宿です。
夜になるとライトアップされるその姿は、千尋が息を止めて渡った油屋へと続く橋のシーンを彷彿とさせます。
また、長野県の歴史の宿 金具屋や、佐賀県の武雄温泉 楼門(油屋を連想させる朱塗りの門)なども、その独特の建築美から聖地巡礼の対象となっています。
海外で圧倒的な知名度を誇るのが、台湾の九份(きゅうふん)です。
斜面に建ち並ぶレトロな茶藝館と、夕暮れとともに灯る無数の赤提灯が描き出す光景は、まさに神々が訪れる夜の油屋のようと評判です。
ジブリ公式は「九份をモデルにしたわけではない」と公式に否定しているものの、その幻想的なノスタルジーを求めて、今も世界中から多くのジブリファンが訪れる最大の非公式聖地となっています。

画像引用元:https://www.gettyimages.co.jp/より
油屋についての小ネタ
油屋は八百万の神様たちが疲れを癒すためのお湯屋(銭湯)ですが、実は興味深い裏設定や小ネタが散りばめられています。
1.油屋で働く従業員たちの正体
よく見ると、どことなくヌメッとした動きやフォルムに納得がいきます。
2.劇中の油屋で響く効果音
3.源氏名のシステム
湯婆婆が最上階の豪華な部屋に住み、従業員たちが大部屋で雑魚寝をして過酷な労働を強いられている構造は、宮崎監督が一昔前の日本そのものを描き出そうとした結果であり、単なるファンタジーにとどまらないメタファーが込められています。
まとめ
千と千尋の神隠しの油屋は、道後温泉本館や目黒雅叙園といった実在する日本の名建築の要素を組み合わせて生み出された架空の建造物です。
同時に、九份や積善館のように、人々の想像力を刺激し油屋のようだと感じさせる風景も世界中に点在しています。


